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* 以下は学研の『教育ジャーナル』2004年6月号に掲載された作品(加筆、変更あり)です。

『兵役拒否』

イスラエル第六軍事刑務所前に集まった数百人の人々は、向かいにある小高い丘に登り始めた。今イスラエルは緑が最も多い時期で、丘には赤や黄色の花が咲き乱れている。その美しい風景は目の前にある刑務所とはあまりに不釣合いだ。

「シャナ・トヴァ(明けましておめでとう)!」。拡声器を持つ人物が丘の天辺からで叫ぶと、他の人々もそれに続いて叫んだ。「シャナ・トヴァ!」。ジャケットを脱いでそれを頭の上で振り回しながら大声で呼びかける母親らしき女性もいる。風船を持つ若い女の子もいるし、凧揚げている青年もいる。

服役中の兵役拒否者に声援を送る支援者
ここに集まったイスラエル人たちは、兵役拒否をしたために軍事刑務所に入れられた5人の若者、アダム、ノアム、マタン、ハガイ、シムリの家族や友人、その支持者たちだ。刑務所の中庭からこの丘がよく見えることから、ここから彼らに新年の挨拶メッセージを送っているのだ。
支援者のメッセージは彼ら5人に
届いただろうか?
イスラエル国内における兵役拒否者は数百人に上ると言われるが、この5人はその活動を煽った主犯格として第六軍事刑務所に約13ヶ月間収監されている。先日軍事法廷は彼らにもう一年の服役を言い渡した。『兵役拒否』としては異例の長さだ。収監当初18歳だった彼らも刑務所で19歳の誕生日を迎え、このままだと20歳の誕生日も刑務所の中だ。

多くの兵役拒否者は精神異常を装って、刑務所に入ることなく兵役から逃れている。若者に同情的な精神科医は比較的簡単に精神異常、あるいは団体生活不適応の診断を下すらしいが、彼ら5人はあえてイスラエル軍に対して戦いを挑んだのだ。彼らの主張はこうだ。「国土防衛のためなら、喜んで軍務にも服する。しかしイスラエル軍が占領地においてパレスチナ人を虐待している限り、断固として兵役は拒否する」。イスラエル軍側はその主張が気に入らない。あらゆる武器、戦闘を拒否する“平和主義者”ならまだ理解もできるが、戦う条件を自分たちで決定する兵士などを認めるわけにはいかないらしい。確かにそれも一理ある。軍隊の兵士たちが、戦闘の条件を個々人で決め始めたら、軍隊は軍隊として機能しなくなる。その最たる例は軍事クーデターだろう。政府や国民の意思を無視して、兵士が政治的方向性を決定するのはまずいのかもしれない。


しかしながら、彼ら5人の主張が軍事クーデターにつながるとは考えにくい。ある意味では彼ら5人こそが国民の声を代弁しているとも言える。学校の『最終学年』を意味する『シュミニスティム』は徴兵年齢に達した高校生たちが作った兵役拒否の支援グループだ。発足当初60人だったメンバーは今では400人に膨らんでいる。その創始メンバーであるノア・レヴィ(19)は言う。「彼ら5人は収監される半年前から闘争の準備をしていました。軍は彼らのような存在を最も危険視しているんです。兵士が激減してしまいますからね」。ノアは笑顔でこう続けた。「軍刑務所に入れられる前には彼らと盛大なパーティを開いたのよ、楽しかったなあ」。活動家とは言えやっぱり19歳だ。

ひと通り新年のメッセージを送り終えると、軍事刑務所にいる若者たちから主催者の携帯電話に連絡が入った。それを拡声器に通して流すと丘にいる全員が盛大な拍手で応えた。ヘブライ語で聞き取りにくい音声だが、それを聞いて涙ぐんでいる人もいた。刑務所の5人からその涙は見えなかったかもしれないが、彼らにも何かが伝わっているはずだと信じたい。


占領地の兵士たち。彼らなしでは治安維持は難しいのも事実だ


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