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* 以下は学研の『教育ジャーナル』2003年に掲載された作品(加筆、変更あり)です。
『戦場に魅せられた仲間たち』 1 <生活>
ビール片手に語らう戦場記者とカメラマンたち
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ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地とされるエルサレム。その一角、高い城壁に囲まれたエルサレム旧市街は宗教聖地ならではの独特の雰囲気を漂わせている。ユダヤ人の聖地である嘆きの壁、イスラム教徒の聖地である岩のドーム、キリストが十字架にかけられたゴルゴダの丘はすべてこの旧市街内にあり、戦時下でも巡礼者が絶えない。しかし、このエルサレム旧市街は『聖地』という顔の他に、『商売の街』という顔も持つ。観光客目当ての土産物屋、異臭を放つ香辛料屋、日用雑貨の店から、床屋、食堂、CDショップまであらゆる種類の店が軒を連ね、狭い通りは人の活気で満ち溢れている。
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この活気ある旧市街には様々な外国人が暮らす。巡礼者、観光客、留学生。しかし、ここにはそのどれにも属さない“怪しい外国人”もたむろしている。物価の安い旧市街の安ホテルに住みつく彼らこそ、欧州、アメリカ、日本などから引き寄せられるように集まったフリーランスの報道記者やカメラマンたちだ。「時間と自由と夢、それに使命感はあるが金はない」、エルサレム旧市街はそんな連中にとっても聖地となっている。
一般的に、新聞社や大手出版社の依頼を受けて取材する記者の場合、経費は会社持ちだ。だから一泊100ドル〜200ドルもする『アメリカンコロニーホテル』などに宿泊できるし、食費などにも気を使う必要はない。しかし旧市街に住む彼らの場合、経費は自腹、みな一様に金には困窮している。宿代どころか、日々の食費までも節約しないと取材活動などできないのが実情だ。
とはいえ、ここに暮らす利点もある。安ホテルはスーク(市場)のど真ん中にあり、食事も安く上げられる。懐が寂しい時にはたった4シェケル(約120円)のファラフェルで空腹を満たすことも出来るのだ。ヒヨコ豆をすり潰し、それを球状にして揚げたファラフェルをアラビアパンに挟んで食べる。野菜やフライドポテトが入ればボリューム満点。みなこれには何度も助けられるはずだ。
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ファラフェルは私たちの栄養源だ
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食べ物以外にも魅力はある。同業の仲間たちとの語らい(情報交換)だ。締め切り日に追われることもなく、マイペースで仕事をしているからであろうか、強いライバル心よりも仲間意識の方がが強い。夜、ビール片手に屋上に集まり、取材時の高揚感と、無事だったという安堵感をその日の『戦果』として語り合う時が一番楽しい。
安ホテルの最安値部屋は40人の雑居部屋。15シェケル(約450円)だ。屋上にあるバラック造りで、軍隊の兵舎にあるようなパイプ製二段ベッド使用し、部屋は男女同室。ここに泊まるのは本当に金に困っているか、かなりの長期滞在を考えている連中だけだろう。神経質な人間にはお勧めできない。大手メディアとの契約がない駆け出しはこの40人雑居部屋からスタートすることになる。当然、この安ホテルにも個室はあるが、トイレ・シャワー付きで100シェケル(約2500円)では駆け出しの連中にはとても手が出ない。ギャラのいい仕事を受けて原稿を書くにはその部屋が最高だろう。夏は扇風機、冬は電気ストーブが付く。ベッドはWサイズだ。雨期には雨漏りするような個室だけれど、みなそこへのランクアップを虎視眈々と狙っている。
安宿の6人部屋。一泊約600円
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はるばるこの紛争地を訪れ、命をかけて取材しても1ページのギャラはせいぜい100〜300USドル(1〜3万円)。金のために出来る仕事ではない。彼らの夢はまず報道で食えるようになること。酒の席でも遠い将来の夢は語らない。その日、その日でいい記事、いい写真が得られればそれでいいのだ。刹那的だが、紛争地報道の底辺はそんな人々によって支えられている。あれから誰があの個室にランクアップしたのだろう?みんな毎日ファラフェルを食っているのだろうか?数ヵ月後にまた彼らと会える。楽しみだ。
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『戦場に魅せられた仲間たち』?A <仕事>に続く
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